大学3年 1学期 (2019/09 ~ 2019/12)

お知らせ

 

大学3年 1学期 (2019/09 ~ 2019/12)

大学3年生1学期はフィリピンで過ごすことになるのだが、基本的に大学2年生2学期の内容と変わらない。勉強と睡眠の日々の繰り返しだ。語学院全体で英語の成績が一番であったり、1日ずっと(大体14時間ぐらい)TED Talkを見たり、日本人の語学院生と見たフィリピンの星が綺麗だったりとそれ以外は(全体の時間の6割ぐらい)勉強に時間を投資した。頑張って体験した内容やイベントなどを思い出しながら書き記す。

 

授業

Contemporary English Ⅰ
-> 初級英語。大体中学英語レベルでReading, Listening, Writing, Speakingを学んだ。

Contemporary English Ⅱ
-> 中級英語。大体高校英語レベルでReading, Listening, Writing, Speakingを学んだ。

Contemporary English Ⅲ
-> 高級英語。大体大学英語レベルでReading, Listening, Writing, Speakingを学んだ。

Spoken English Ⅰ
-> 大体高校英語レベルでSpeakingを学び、discussionからプレゼンまでを行った。

Purposive Communication
-> discussion中心の授業でSpeakingが鬼のびのび太。

 

部屋メン(大学 3年 1学期)

1, 歌が大好きなボロボロ服の青年
2, 散歩好きな無感情&KY野郎
3, 赤いサイコパス

彼らについて記述することといえば、今までの部屋メンと比べ静かな方で勉強がよく捗った。歌が大好きなボロボロ服の青年はよく歩きながら、寝そべりながら歌を歌っており鬱陶しかったが、まだ許容レベルの音量だったためストレスがあまり溜まらなかった(溜まっていないとは言っていない)。赤いサイコパスはよく衣類が赤色だったのと虫の捕食シーンを見て自分も捕食される側になって虫を食べてみたいだの、食べられたいどの言っておりよく言って好奇心旺盛、悪く言ってサイコパスと表現できるのだが今回は(も)後者を採択した。散歩好きな無感情&KY野郎はボードゲームやカードゲームに精通しており、よく歌が大好きなボロボロ服の青年と大富豪を朝が明けるまでしたのは良い経験(自分の数少ない青春)。

 

MK LANGUAGE TRAINING CENTER

大学2年2学期の夏休みでの語学院の教育が終わり、次は英語研修生から大学間で行われる交換留学という形で英語を学ぶことになるのだが基本的には大学で英語で授業を受けたり、1対1で英語を教わったりと前の語学院での学業スケジュールとそう変わらない。まず簡単に自分が生活を過ごした語学院兼寄宿舎について記述する。自分が滞在することになった町の名前はIloiloと言い、世界でも指折り数えるくらいの平和なところで語学院の周りは平野で200m先に行けば、民家がちらほらある程度のいわゆる田舎町だった。前回のマニラの語学院と違うところは語学院の壁が銅壁でなく灰色版の煉瓦であったり、全体の面積が1/2ぐらいだったり、語学院内部に自然が少なかったりとした。語学院には日本人や韓国人のほか台湾やタイ、中国などのアジアの周辺国の学生や社会人が英語を学びに来ていた。そのため日本語や韓国語が聞こえて来たため外国にいる気がしなかったが話しかけられなければ問題がないと思い、日本人に対しては韓国人として、韓国人には日本人として振る舞った。まあ最終的にボロが出て、結局両方とも友人になっちゃうんだけどね。

語学院到着後、生活用品も購入しに大型モールに行くのだが語学院バスに乗って向かう。フィリピンでは公的交通機関よりも個人でトライシクルやバスを出している母数が多く、またその安い物価から日本でいえば30円払えばいつまでもバスに乗り続けることができる。フィリピンのバスは日本のように空調や窓があるわけでもなく、また移動距離によって金額が変わらない(日本のようなバスもあるが個人バスよりも値段が張るためあまり乗らなかった。)。バスは後ろから入ることになっていてイメージとしては電車のように両隣の座る席があり、上にはあまり意味を成していない取手、前方に運転手がいる。バスの大きさは日本のタクシーを高さを1.5倍にして横を3倍くらいに大きくしたものだ。なので基本的には背筋を前屈みにして出入りするのがバス内での移動方法である。いざバスに乗り右側の席に座ったのはいいものの初めて乗ったため、どこにいくら払えば良いのかわからなくあたふたしていると近くに座っていたおばあちゃんが値段と運転手に払うというのを教えてくれた。この時点で2ヶ月フィリピンにいるのだが、全体的にフィリピン人は非常に親切だ。なんともありがたい。そう思い少し多めではあるがお金を運転手に手渡したのだが、釣り銭が帰ってこない。頭にはてなを浮かべながら考えていると料金表が天井に貼り付けており、よく読んだら最低30円からと書いていた。なるほどなるほどと妙に納得しながら、料金体系が発展国と違うことに対して興味深さを感じていた。

大型スーパーまで大体15分くらいかかると言われていたのでそれまで町を見ながらボーとしていた。大体8分ぐらいして5歳ぐらいの子供が入って来た。フィリピンでは基本的に停留所がなく、ある特定の場所には止まらない。タクシーを呼ぶように手を挙げるかそれなりの人数がいないとバスは停まってはくれないのだ。つまりはバスの運転手の経験と気分によって乗れる乗れないが決まるのだ(降りるのは言えば降ろしてくれるので簡単だ)。初めてその子供を見た時、こんな小さな子でもバスに乗り込んで目的地に行こうとするなんて随分と立派な子供だなと感心した。お金を払いに奥の方に歩いて行ったと思ったのだが背中を運転手側に反転し、封筒のようなものを乗員に配り出した。封筒を配り終えると自分の隣に座って可愛い声で歌を歌い出した。渡された封筒の表面を見ているとタガログ語で何かが文章が書いているのだが、文字がわからずまったく解読が不可能だった。フィリピンでの経験を総合評価して、おそらく物乞いの類であろうと思いながら封筒を見ていたら横の子供が立ち上がり、奥から順に封筒を回収してバスを降りた。その子供がバスから降りて何をするのか見ていたところ道路から少し離れ地面に座り封筒を逆側にしていくら入っているのか確認した後、一銭も入っていないことを確認すると横顔であるが残念そうな顔をしたのが見えた。バスが出発しようとしたその瞬間、その子供が立ち上がりこちらを見たのだがその時目があった。2~3秒目を合わせ、その後道路側に振り返った。おそらく次のバスを探すためだろう。ここで発展国と発展途上国の格差はまだまだ大きいと感じたのと世の中はなんとも不平等だと思った。

日本ではバイトで10万くらい稼ぐことは普通ではあるが、フィリピンではその金額を稼ぐのに2~3ヶ月ぐらいあるいはもっと時間がかかったりもする。日本では義務教育だって受けることも出来るし交通機関や医療、福祉も発達している。日本の識字率は99%を超えるが50%の国だってあるし、道路も舗装されていない国や、歯の治療ができず若い年齢で歯が既に2~3本抜け落ちている子や病気があっても医療費を払えなかったり人たちも多くいる。生まれてくる子供たちは生まれてくる場所や親を選べず、また生まれることに対しても決定権はない。親のエゴによって生まれてくる子供たちは生まれた場所や親の社会的地位によって生まれた瞬間から格差が生まれる。発展国でかつお金持ちの親の元で生まれれば、何不自由もなく生活を謳歌することやまともな教育を受けることができる。それと対照的にミサイルを打ち込んで来るような独裁主義の国に生まれ、その独裁者の悪口を言えば射殺されるような国だったり、病気が蔓延している致死率の高い国や人身売買がおこなわれている国に生まれる子供たちとでは送る人生の辛さ加減がかなり違う。だからといってそのような国の子供たちを助けることはできない。生まれてくる場所や親によって人生の経験できる幅が決まってしまう。そう言った意味で世の中は平等ではない。とそんなことを感想として持ちながら、大型スーパーで買い物をそそくさとしてそそくさと帰りはトライシクルに乗って寄宿舎に帰った。次の日から授業があるのだがこの部分は特に述べることがない。勉強勉強勉強だ。ライティング力向上のため1000単語以内で4ヶ月間エッセイを書いたり、スピーキング力とリスニング力向上のために毎日トピックを探してはメンターと意見交換および討論をしたり目標を持って学習に専念した。

 

経済学教授兼格闘家ポウ(ここは飛ばしても問題ないです。)

交換留学生ということで大学で授業を受けることになり、ワクワク感を感じながらも英語で授業を受けることに関して少しばかり不安を感じてていた。今まで韓国語の授業を受けてきて慣れてきたところに別大学で英語で授業を受けるのだから緊張するのは無理もないだろう。大学で授業を受ける前に大学に行き、自分の受ける授業を記入して大学側に提出し学生カードのために写真を撮りその日は大学の見学をした。広さは大体東京ドームより少し大きいくらいで自然に囲まれており、大学内に保育園と小中高校があるいわゆる一貫校のようになっていた。また学部ごとにそれぞれ独立した建物があったり体育館、プール、聖堂などがあり若い世代が常に溢れていたりした。フィリピンの大学はフィリピン人であれば公立の保育園 ~ 大学までの料金は無償になるのだが、自分が交換留学で参加した大学はお金があるフィリピン人が通う私立大学だった。大学を一周し、大学内にあるビリヤードをしてその日は帰宅した。

その次の日、大学で授業を受けるために登校する。席に座り教授を待つ。大学の授業は週3で1日3時間、1時間ごとに先生が変わる。1時限目を担当する教授は経済学教授兼格闘家ポウ(男)、2時限目は美人大学院生のレイチェル(女)、3時限目は言語学教授の金髪イギリス人ミランダ(女)。

それぞれの授業に対する感想として経済学教授兼格闘家ポウがする授業は難しかった記憶がある。時間ごとに違う分野の授業(例 : 経済学、心理学、倫理学等)を行い、次の時間までに自分の考えをまとめて討論をする形式を取っていたので退屈はしなかったのだが、毎週授業についていき課題をこなすのには少しばかり時間がかかった。

美人大学院生のレイチェルの授業は基本的かつ応用的コミュニケーションというものでただ役割ゲームをしたりプレゼンをするだけだったので特に難しくはなかった。スタイル抜群のメイクが必要のないくらいの顔の彫りが美形でこれがフィリピンの美人なのかと感じた。

言語学教授の金髪イギリス人ミランダは性格的な意味で癖が強かった。そもそもなぜイギリス人がフィリピンにいるのか謎であったが、それを吹き飛ばすほどイギリス人独特のユーモアを展開してきたり、国際政治についての知識や自身の見解を述べた後に生徒にどう思うのか問うなどいわゆる外国大学のようなスタンスで授業が行われたため飽きがこなかった。授業は大学英語となっていたが国際問題や政治の話が主でそれについて意見交換をしつつ英語の発音を個別にイギリス仕込みの端正をするという具合だった。

美人大学院生のレイチェル(女)、言語学教授の金髪イギリス人ミランダとは特に授業以外で交流をすることがなかったため特に記述することがないのだが、経済学教授兼格闘家ポウとはプライベートでも個人的な付き合いがあったのでそのエピソードを書き記す。

初めてポウを見た時の感想は軍教官だ。禿頭に丸顔に口髭、濃い緑色のポロシャツに広い肩幅、少し出っ張ったお腹、太めの両腕と収納ポケットが多いズボンを履いていた。よく笑ってはいたがどちらかと言えば口がその形をしており、目の部分は変化がないため少しの違和感と何を考えているのかわからない恐怖を感じた。博識であり多角的な観点から討論のトピックに関する分析と全体の意見を聞きながら授業の方向性を維持するものはさすがは教授といったものだった。授業中に英語には自信があったがわからない単語や文法的な意味がわからない場合はよく授業終わりに質問をしたりした。これが気に入られたのかわからないが質問以外にも談笑を持ち出してくることが多くなった。談笑の内容は決まって格闘術の話題で日本の空手は完成度が高いだの、フィリピンの武術にはなになにがあるだの、ナイフを使った護身術なんかも教えてもらった。

大学の授業が終わり気分で大学内で散歩していたある日、偶然ポウ教授と校内で会い何をしているのかを尋問された。その時ただ散歩をしていただけなのだが、自分でもなぜかわからないが勉強するところを探していると答えてしまった。そうするとポウはカフェでテストの採点をするところで今から車を取りに行くところだと返答し一緒に来るかと誘われてしまった。いつもの自分であれば断るところだがなんか怖くて断れず行くと返事をしてしまった。そうして共に駐車場に向かい車に乗るのだが、さすが大学教授だけあってこの辺ではあまり見ない良さげの車を持っていた。車に入りシートベルトをしいざ出発。運転中は談笑をするのだが、またまた格闘術についての話だ。関心を向ける自分にも責任があるのだが、日頃から聞いている格闘術の話と自分の知的好奇心による疑問が浮かぶことによって会話は思ったよりも盛り上がった。実は車に乗る前、本当にカフェ屋さんに向かってくれるのか、ポウ教授はゲイであったか等の否定的な考えが頭の中をぐるぐるしていて怖かったのだが、話せば話すほど実は良い人であると理解していくことになる。

カフェ屋さんに無事到着し、店員にカプチーノを頼み席で待機する。ポウはブラックコーヒーにサンドイッチ。お互い簡単に談笑をし5分後ぐらいに私は英語の勉強、ポウは定期テストの採点をし始める。小一時間が過ぎたくらいにポウが採点を終え自分も勉強が一通り終わりカフェを出て車に乗り込む。ここで自分が格闘術に興味があると思ったのであろう、格闘術の大会がやってるから一緒の見に行かないかと誘われた。もう疲れたんで帰りますだとか実は格闘術あまり興味ないですと断ることができずわけもわからずそれを了承。30分ぐらいポウが格闘術に興味を持った経緯や格闘術を覚えるメリットなどの話を傾聴しながら、車に揺られて会場に到着。

以外と人がいてびっくりしたと同時にその大会は小学生から大学生までが参加しており空手部門、武具部門、テコンドー部門、フィリピンの格闘技部門で分かれており、会場は活気に満ちていた。ポウは格闘技仲間と会って話をしている。格闘術の大会で行われている部門を一通り見てポウのところに戻り、感想を聞かれたので興味深いと返した。するとポウは空手部門の中学生の決勝があるといいそのリングに向かう。決勝だけあって周りには多くの人がいた。試合はすでに始まっており両者しっかりと相手を見据えており技をかけ合っている。なかなか拮抗した試合であったが、最後は回し蹴りが顔面にヒットし終わる。会場で格闘技を見て1時間後ぐらいで全ての部門が終わり、最後にポウが寄宿舎まで送ってくれ、その日は終わる。興味のなかった格闘技の技や護身術を教わり日本に帰るのだがこれを実践する場面に出会したことがない。いつかこの覚えた技術が役に立つことを願っているのと自分一人ではすることの出来なかった経験をさせてもらったことに感謝している。

 

刹那の恋愛

我ながらこのようなダサい題目に恥ずかしく赤面してしまうのだが、時間の概念を入れたいという思いからこれに決定した。というのもこの題目にしたしっかりとした意味がある。中学時代、自分にも友と呼べる人物がいた。彼はいわゆる陰キャ(自分もだが)と呼ばれる部類の人間で、休み時間によく他愛もない会話をする関係で共通の趣味があってか仲は良い方だった。つまらない授業が終わり、いつもどおりの他愛もない会話をしにスタスタと私の机に向かってくる友人の顔がいつもにもなくニタニタしており大変気持ち悪かった。冗談混じりに ” 今日のお前の顔きもいな。薬でもやったのか? ” という挨拶をしたところ “ 薬よりもいいぞ ” と意味のわからない返事をしてきたので、その意味ありげな返事の詳細を聞いてみるとどうやら1ヶ月前に彼女ができたらしい。入学した頃から気になっていた子であり付き合いたいと思いながらも奥手になっていたところ、その8ヶ月後ぐらいに告白されたらしい。二つ返事でその告白をokし、友人も入学した頃から気になっていたと伝えたところ彼女は赤面し友人も赤面。付き合う前も好意を抱いていたが付き合い出してから彼女に対しての愛が溢れているそうだ。彼女のこんなところが可愛いだの、完璧だの色々聞かされて羨ましくないぞさっさと爆発しろリア充って感じだった。そんなマシンガントークの中にも興味深い内容があった。彼女と一緒にいる時は時間が一瞬で過ぎ去るようだ。恋愛をすると時間が早く過ぎ去るというのはよく聞く話だ。神経伝達物質の分泌とかで説明できそうなことではあるが、自分は今まで誰かを心から愛したことがなかったためその友人の感覚は理解できなかった。フィリピンではそれを体験することになる。

交換留学生として英語を学ぶことになった私は将来米国の大学院の進学という目標があったため英語学習以外あるいはそれに準ずるもの以外には時間を使わないと固い決意をしていた。英語力を測るテストを受け最も高いクラスに入り英語の学習が始まったのだが、配られた教科書(6冊)を10日で終えてしまい、またその教科書に出て来た単語も全て覚えてしまった。本当に全て覚えたのか各メンターがテストをしたのだが全て正解し次の教科書に移るのだが、自分は英語レベルでも一番上位におりこの教科書以外に難しいものはないと言われた。本当にそうなのか怪しかったため、わざわざ深夜誰もいなくなった後に事務所にこっそり入り、陳列してあった教科書を確認したところ本当だった。なのでメンターにアメリカの大学院に進学したいことを教えた旨、TOEFL試験でよく出てくるエッセイのトピックを毎日1トピックだけ1000文字以内に収めて書き、授業開始10分ぐらいで添削をしてもらい残りの40分ぐらいでそのトピックについて話し合うような授業を4ヶ月ただひたすら続けた。おかげで総合英語力は格段に向上した。だがこれだけ学習しても時間は余る。その余った時間は携帯をいじったり睡眠に使った。他の国から学習者もおり、もちろん日本から来ている人もいた。この時自分は英語学習だけをすると決め込んでいたため、現地で全く意思疎通は取らないにしても中性的な態度を決め込んでいた。

 

出会い

ある日の休日、散歩好きな無感情&KY野郎がロビーで誰かとカードゲームをしていた。対象は4。散歩好きな無感情&KY野郎の他に歌が大好きなボロボロ服の青年と詳細不明の女が2。日本語で会話しているのを聞くにおそらく日本人だろう。ここで私は日本人とは関わることは英語学習効率が減少すると思っていたためできるのであればあまり関わりを持ちたくはなかった。正直日本人という認識すらされたくなかった。なぜなら知らなければ話しかけられる確率が減るからである。だが残念なことに外に出るためにはそのロビーを通らないといけない。売店に勉強効率を向上させるために糖分を買いに行きたかったのだが、どう行こうかと考えていたがそれを考えること自体が時間の浪費と思ったため、ここはガン無視を決め込んで一気に突っ切ろうと考えた。散歩好きな無感情&KY野郎が話しかけてくる確率が高そうなのが憂慮ポイントだったが決心していざ扉を出た。ガン無視ガン無視と念じながら散歩好きな無感情&KY野郎が気づかないことを願ったのだが予想通り自分を認識して話しかけた。それに釣られてゲームをしていた全員が私を見てきた。話しかけられなければガン無視を決め込もうと思ったのだが、話しかけられたい以上はもう逃れられないと思ったし印象も悪い。仕方なく返事をしゲームに誘われたので仕方なく、1プレイだけすることになった。ゲームをしながら簡単な自己紹介をしながらゲームを進めていると、なんと気がついたら8ゲーム目になっていた。自分は1点集中型の人間なので何かしらの活動や業務等をするとそれだけに集中する性質がある。ゲームにもこれが適応されて集中してしまった。これを予想していたのでゲームをしたくなかった。時間を2時間も消費してしまった。ゲームをしながら残念と思いながらでも詳細不明の2人の情報を得ることができたので収穫はあったと無理やり時間を使った報酬として理解し頭に落とし込んだ。その2人の中の1人の女性(以後K)が自分の学習生活に介入してくることになる。

 

うつろい

ゲームをしたその日以降、Kと会うたびに挨拶をするようになった。ゲームをきっかけに多少仲良くなったため、話しかけてくるのは当然っちゃ当然のことだろう。話しかけてくるのであればある程度の返事をするのが人間としての道理だろう。簡単に返事をしてあしらう。次の日もその次の日も。ある日、違和感のようなものを覚えることになる。勉強しているとKことを思う時間が増えた。これも人付き合いをしたくない理由だった。男であればまだしも女性は最悪だ。女性であれば男としてはどうしても意識してまう。その当時の自分は(今もそうだが)女性と接吻を交わしたことも、体を重ねたこともなく、彼女いない歴 = 年齢のようなチュリー君だ。こう毎日挨拶してきては私に気があるのではないかと童貞丸出しの錯覚をするのも無理はないだろう。心理学専攻の行動認知心理学研究をしていた私は己の感情や非合理的な思い込みを分析しつつ理性を働かせ挨拶は挨拶であり、人間としての付き合いに必要な儀式として挨拶をしていると理解しながら、理性とは反対に密かな淡い期待を胸に抱きながら、日々を過ごすようになった。

ある日を境に挨拶だけでなく簡単な談笑をする関係にまでなってしまった。授業の休み時間たまたまベンチで休んでいたら、隣に座ってきて話しかけてきたり、思わせぶりな発言や仕草等で完全ではないがまんまと釣られてしまった。勉強しながらKを想う時間がさらに増え、会いたくて、一目姿を見たくて、話しかけられたくてKと過ごすたった5秒という短い時間でも嬉しくて、会えなかった日は元気が出なくて、自分の頭の中はKでいっぱいになってしまった。これが当初恐れていた最も最悪の事態だった。明らかに勉学の質も量も落ち、その代わりにKを想う時間が増えた。大学院進学のために英語を学習するという目的の達成に対しての1番の障害だ。両立したり分別すればどうにかなると言われかもしれないが、私は一点集中型の人間であり、そんな器用な真似はできない性分だ。つまり不可能だ。

 

プール

勉学の時間と引き換えにKを想う時間が増え学業に対する焦りを思いながら、今まで苦しかった人生で初めてこんなに幸せを感じることに葛藤を覚えそんな日々を過ごしていたある日、散歩好きな無感情&KY野郎がプールに行かないかと誘ってきた。もちろんNoだ。金がかかるのだの時間資源の浪費だの、勉強をしたいだの断る理由を列挙していたところ、どうやらKも行くらしい。答えはYesに変わった。運動をすることで老廃物が体外に放出されるのと太陽光を浴びることによって睡眠の質が向上し学習効率が向上するだろうと理屈を組み替えてプールに行くことを肯定した。人を好きになるとはなんとも恐ろしい。人の思考を簡単に変えてしまう。普段であれば絶対に行かない。だが今の自分は違う。Kが自分の世界の中心にまでなっていた当時は断る理由は皆無に等しかった。

プール前日、プールに行っては勉強する時間が取られてしまうと考えた私はプールの時間でも脳内で覚えた単語を反復したり、文章を考えることで体は遊びながらも頭では勉強しようと考え遅い時間まで勉強をした。プール当日、散歩好きな無感情&KY野郎に起こされなんとか起床し、男4人と女2人でトライシクルを捕まえ出発した。30分ほど振られ受付に到着。入場料を払い着衣室に入り水着に着替える。男全員着替えて先に出て少しばかり待つ。男性であれば共感してもらえると思うが、女性の水着姿というのは男性の生物としての期待を抱かせる代物だ。自分の好きな女性の水着姿とあっては夜も眠れないだろう。5分ぐらい待つとKが水着姿で出てきた。普段見ることのできないその水着姿を見て思った感想としては無だった。普段から理性ベースで思考して行動しているせい(おかげ)かチャリーのように赤面するわけでもなく生物的な反応もなかった。男として申し訳ないとなぜかごめんなさいと心の中で焼き土下座をした。

プール会場は思ったよりも広く屋外と屋内で分けられており、屋外のプールは水が汚いということで屋内側のプールで泳ぐことにした。みんながそそくさと屋内プールへと向かうなか、私はトコトコとゆっくり歩いてついて行った。歩く速度からどんどんとみんなとの距離が離れる中、Kは自分の歩調と合わせて歩いていた。” 晴れてよかったですね ” とか”  水着似合う ” なんて心にもないお世辞等の他愛のない会話をしてながら、なんでわざわざ最後尾の私と歩いているのだろうと思っていたら、いきなり私の手を掴み恋人繋ぎをしてきた。先ほどまで考えていた英語の文章が一瞬に消え去り、全ての意識が私の左手指に向かった。今まで恋人繋ぎなんて保育園の運動会で行進する時ぐらいしかなかった私だ。繋がれたと認識した瞬間チェリーの本領発揮と言わんばかりのちょい赤面になってしまい心拍数も上昇。先ほどまで統制されていた理性ベースの思考と意識の全てが一瞬にしてKに対する思いを馳せる感情ベースの自分へとひっくり返ってしまった。だが面白いことにKに対して想いが溢れてくる反面、なるほど世俗ではこうして異性に対してアプローチをかけるまたは引っ掛けて沼らせるのかと妙に頭で納得して勉強になったと感心した私もいた。Kの小さく柔らかな手の温もりを感じながら早く行こうと言いながら歩調をまったく早くしないことやみんなが遠く離れていく中、Kとの二人だけの時間を過ごせることができていると考えるとなんとも暖かい気分になり幸せを感じた。だがこの幸せも束の間、散歩好きな無感情&KYクソ野郎がこちらを振り向く。それに気づいたKが手を離す。早く来い催促されトコトコと二人歩いて向かう。幸せな時間をぶち壊した散歩好きな無感情&KYクソ野郎を心の中で心底恨みながら、Kの小悪魔のような笑顔を見てまた心の中が平穏と幸せに包まれた。どんな恨み辛みがあっても大好きな人がそばにいて笑顔を見せてくれるのであればそれを許すことが出来るのかそう思った。その後も何度かみんなが見えないところで恋人繋ぎをしたり体を寄せ合ったり彼女の身体的アプローチが続いた。これで頭空っぽで鼻を伸ばし幸せを謳歌できればよかったのだが、私はKはいわゆる地雷あるいはどの男にもこのようなアプローチをするビッチ、あるいはこれが女性全般の人に対してのアプローチ方法なのか、懐疑主義の私は何か裏があるんじゃないのか、勘違いじゃないのかを考えながらプールで半日を過ごした。

 

帰りに焼肉屋に寄り食事をしタクシーで寄宿舎まで帰るのだが、Kはアルコールを入れておりほろ酔いの状態になっていた。タクシーの後ろの席でKが隣に座りまた他の人からは見えない死角での恋人繋ぎ。この時、私は彼女はおそらく誰にでもこのようなことをする寂しやがりの地雷だと根拠のなしの結論をつけた。Kが自分の肩に寄りかかってきた。ふとKの顔を見ると大粒の涙がKの頬を一滴二敵とつたり流れているのがわかった。心理学で無意識という概念がある。よく無意識に行動をしたということを聞くと思うのだが、これは自分が認知できない心の奥底の欲求や闘争心などの感情が行動や言動として表面に表出することを指す。基本的に人の無意識というのは自身の意識ある状態では出てこない。だがストレスを感じたり、精神的に衰弱したり、脳がなんらかの原因で正常に意識を制御できない場合、よく表面に現れる。その時、Kはほろよいであり脳がアルコールで麻痺を起こし無意識が表面に出やすい状態になっていたのであろう。その反応が涙というわけだ。だがなぜKが涙を流したのか正直わからなかった。心理学の教科書で学んだことが当てはまらず原因がわからなかったので、私の直感を信じてそのワケを考えた。大粒の涙に心なしか寂しいというより悲しいに近い表情をしていたためおそらく過去に何かあったのかなと考えた。思い違いでなければ、おそらくKがプールで自分に対して身体的アプローチをして気を引こうとしたのはKがビッチだったり、女性お得意の身体的コミュニケーションではなく何か伝えたいことがあったからじゃないのかと思うようになった。そんなことを思いながら寄宿舎に到着し各自それぞれ解散となりKは部屋へと帰っていった。自分も何かと考えることが多くベットインして3分ぐらいで寝落ちしてしまい、その日は終わった。

 

涙のわけ

はらはらドキドキの時間と謎が残ったプールの日以降、Kとは語学院で話す頻度が減った。以前であれば話せなかったり会えないことに対して感情がブレブレに揺れ動いたのだが、その時は心配をするようになっていた。Kのことを考えると、あの時流した涙と悲しげな表情が脳裏に思い浮かぶようになったからだ。ただ私の行き過ぎた妄想であればそれで良いのだが真相がわからずモヤモヤ感が消えない。

そんなことを思いながら何日か過ぎたある夜の日、一通りの大学からの課題と自習を終えなんとなく窓際に行く。空を見たら一面星空である。田舎であることと排気ガスが先進国よりも少ないせいか星が輝いているのがはっきり見える。視線を見下ろすとKが他の人とバスケットコートで会話している。その日は湿気が少なく気温も暖かく風が緩やかだった。勉強の気分転換という名目でKに会いに行く。

2週間ぶりにあったKは依然と変わりになく綺麗だった。Kに対する好き好きフィルターはまだ健在のようだ。バスケコートにマットレスをひき星空の下にふさわしい心が落ち着くBGMを流しており、私を含め4人で談笑を始める。その10分後1人、そのまた10分後1人と部屋に帰って行き、Kと二人きりになる。マットレスの上に座りながら久しぶりの談笑をする。ふとしたタイミングで私の肩に頭を置いてくる。恋人繋ぎのハッピーセット付きだ。お互い無言の中、BGMも切れて二人だけの空間と時間で幸せに包まれながら頭の中ではあの日のタクシーで流した涙のわけを考えていた。そのわけを直接聞きたかったのだが、触れない方が良いこともあると、この時の私は知っていたので質問することを躊躇った。だが自分の知的好奇心とこうした身体的アプローチが何かのアピールかもしれないと思った私は語学院に来た経緯を質問した。話を要約するとこうだ。Kは語学院に来る前に婚約をしていた彼氏がいたそうなのだが浮気をされていたことが発覚し婚約破棄。彼のことを本当に好いており、結婚も1週間後にする予定だった中の突然の出来事で辛い思いをしたらしい。その辛い思い出に対して整理をすることとK自身の心理的療養がフィリピンに来た主な理由だった。おそらくこれが涙を流した理由だろう。彼女は浮気をされたのも婚約破棄したのも自分のせいだと言う。詳細はここでは書かないが、婚約破棄の落ち度は彼氏にあったと思った私はKに対して、” どちらが悪いか自分が判断するのは難しいが、少なくともあなたに落ち度はないとは思う。彼の要求は独占的で利己的だった。だからあなたは悪くないし、あなたのせいではない。あなた自身のせいにしないでほしい。辛いだけだから。 ” と言いKの顔を見ると目には大粒の涙が浮かんでおり心配させないための作り笑顔を作って笑って見せた。” 無理しないでください。 ” と言った途端、声を出して泣き出す。偶然ポケットにあったティッシュを差し出して背中をさすりながら泣き止むのを待ちながら頭の中でプールでの恋人繋ぎやタクシーでの涙はK自身の寂しさも埋め合わせるための行動であったことに対して、謎が解明されスッキリさを得たと同時に結局私はクッションとして使われたのかと少しばかりのガッカリさを感じながら、大学1年生の時に人に優しくあることを学んだ私はKが泣き止むまでただそばにいることしかできなかった。Kが泣き止み、落ちついた頃には深夜になっており気温も冷え始めたためマットを畳み、各々の部屋へと帰った。部屋に帰ると部屋メンはすでに寝ておりなんとなく疲れた自分はベットにダイブする。その時頭の中ではKに対して好意を残しながら同時に自分自分の悲しみ故にクッションにされたことに対してむかつきのような感情が浮かんだ。婚約破棄をしたこともされたこともないためその辛さはわからないが、自分の最愛であったと思った人に裏切られれば私もKのようにクッションを探すのだろうか。辛いとは思うがそれをチェリーくんに対象を絞るとはメンヘラでも許せないと、自分が勝ってに期待しといて裏切られたことに対してKに恨みを覚えた。なんとも精神的に未成熟で自分本位なのだろうと今こうして書き記すとそう思う。

 

告白

その日以降Kを避けるようになった。挨拶されても簡略化された最低限の対応をしできるだけ避けた。授業が終わればすぐに部屋に帰り、ずっと部屋に篭り続け英語を勉強した。そんな日々が交換留学最後の日まで続く。大学での授業期間がすべて終わり英語学習に一区切りがつき、英語の実力がかなり続いたにも関わらず帰国前日まで英語学習をしていた。そんな姿を見た散歩好きな無感情&KY野郎に交換留学最後の日くらい遊べよと言われたのでそれを拒否し勉強を続ける。そしたら散歩好きな無感情&KY野郎に教科書を閉じられ強制的にビリヤードに連れて行かれた。

自分を含めた男2に女2だ。女2は韓国人なのだが割と仲良く過ごしており、よくこのメンバーで一緒に食事したりしたため友好関係は肯定的だった。その後、夜の街に繰り出しビリヤード対決をするのだが負けたチームがバーで何かしらを奢るという条件で勝負した。結果はぎりぎり私達のチームが勝利し、バーでジュースを奢ってもらった。4人でドリンクを飲んで談笑をしていたところ1人の女の携帯が光る。その通知を確認しすこし表情が曇る。その通知曰く、彼女が好きなフィリピン人男性が近くで他の留学生たちと酒を嗜んでいるそうだ。彼女はその男性のことを狙っているのだが、その彼がゲイであるため彼女の願いが叶う可能性が低いのだが、他の女と仲良く酒を飲んでいるのが我慢できないらしい。彼女がやけ酒をする姿を見て自分が好きなことを告白しろよ言ったところ、告白するくらいなら死ぬと言われ、ではその場に行って他の女が寄り付かないようにしろよと言ったら、恥ずかしくて行けないらしい。アルコールが回り始めめんどくさいなってきた。この場から離れたいなと思った私はそのフィリピン男性がどんな人と飲んでるのか偵察するという口実でその場を離れた。口実ではあるが行かないと後で何言われるのかわからなかったため、しっかり偵察をしに行った。あらかじめ場所を口頭で聞いていたので彼を探すのは苦労しなかった。自分達が飲んでいるバーの目と鼻の先ぐらいの距離で彼はいた。彼の周りを見たところ男たちと飲んでいたことを確認しちゃっかり盗撮して画像を保存する。これでしっかり偵察した証拠ができたので安心とそう考えた私はもう少し時間が経ったら帰ろうと考え歩き出す。彼がいたところのラウンジを見ながら視線を横にそらすと足が止まった。

Kがいる。Kを見た瞬間脳裏に今まであった出来事や感情が一気に溢れ出てくる。この時の私はKを綺麗だとは思わなかった。Kに対しての好き好きフィルターは無くなったようだ。Kのことを好きと思う気持ちもありながら、K自身の寂しさを埋め合わせるために使われたことに対してむかつきを感じた私は会ったところで気まずいし、明日帰国するので関係ないとその場から早く離れたかった。そそくさと目線を別方向に逸らし歩き出そうとしたその時、Kの隣にいた友人が私の名前を呼ぶ。内心 ” まじか ” と思う。呼ばれたものは仕方がない。その声の方向に目を向けるとKと目が合う。こっちに来いと言われ、しぶしぶその席に向かう。席はKが座るちょうど前方しかなかったためその席につく。” 明日韓国に帰るのに挨拶もなしに帰るのか “ とフィリピンのメンターに言われたのだが、そんな言葉は耳に届かない。Kが目の前におりどんな表情をすれば良いのかわからないからだ。自分本位ではあるがKに対してむかつきを覚えていたため、座ってからは体を別方向に向け目線も合わせることをしなかった。そうして30分ぐらいが過ぎたぐらいだろうか。後ろから肩を叩かれる。振り向くとゲイのフィリピン人に好意を持っている韓国の女が顔を赤くして立っていた。

” あ。 これはめんどいぞ ” と思うよりも早く手を引かれ裏路地に連れて行かれる。強引に連れて行かれて何を言われるかと思ったら腹部に拳がめり込む。防御体勢をとっていなかったためかなり響いた。お腹を抱え下を向く。女のパンチだったためすぐに痛みがひき彼女の顔を見ると泣いている。彼女が大量にアルコールを入れており泥酔したため舌があまり回っておらず、内容が聞き取りにくかったのだが要約すると、自分が何分経っても帰らないことに不安を感じていたらしい。ゲイのフィリピン人のことが好きで何回アプローチを仕掛けてもゲイであるため見向きもされず辛い思いをしたらしい。その彼に対する叶わない思いと私が全然帰って来ないことに対して考えていたらいても立ってもいられずバーから飛び出たとのことだった。先ほどのパンチはその感情が乗ったと渾身の一発だったらしい。ただ大泣きする彼女に対して戸惑いを感じながら、何の言葉をかけてあげれば良いのかわからず、どうしようもできないこの状況に私はただ立ってすまないと謝罪するしかなかった。少ししてもう一人の韓国人と散歩好きな無感情&KY野郎が彼女の泣き声に気付き自分の方向に向かってくる。先ほどまで私の前の席にいたKと共に。なんでKが2人と共に来ているのか訳がわからなかったが、そんなことをよりも現状の解決が先決だと考えた私は簡単にKにことの経緯を話し、泣いている彼女をとりあえず元いたバーに連れて行く。韓国のもう一人の女友達と韓国語で色々言っており、ついてきたKは背中をさすっている。一方で自分と散歩好きな無感情&KY野郎は何をすれば良いかわからずジュースを飲んでいるしかなかった。しばらく時間が過ぎ泣き止んだ彼女を寄宿舎に帰すトライシクルを探すためにその泣き止んだ彼女と韓国の友人、散歩好きな無感情&KY野郎が店から出る。Kと二人きりにされてしまう。今まであれば幸せを感じる状況ではあるがその時は気まずさしか感じなかった。周りにも客もほとんどおらず店のBGMだけが鳴り響いていた。居心地の悪い沈黙が続く。最初に口を開いたのはKからだった。

彼女 : ” 久しぶりだね ” 

自分 : “ そうですね ” 

彼女 : ” 私のこと避けてた? ”

自分 : ” 避けてはいません。たまたま会わなかっただけです” と嘘をつく。

彼女 : “ 明日帰っちゃうんだね ” 

自分 : “ そうですね ” 

彼女 : “ 寂しくなるね ” 

自分 : “ すぐに慣れます ”

と質問に対して必要最小限の答えを返す。またまた居心地の悪い沈黙が続く。気まずくなり目線をKから逸らし散歩好きな無感情&KY野郎が早く来ないかと待っている。するとKの右手が私の左側の頬まで伸びてきて顔の角度を変えるのと同時にKの方に引き寄せキスしようとしてきた。咄嗟の出来事に反射的に避けてしまった。

彼女 : “ ひどい ” 

自分 : “ すいません ” 

この時のすいませんは2つ意味がある。一人の男性として一人の女性のキスを拒絶したことに対してのすいません。もう一つはこれまで避けてきてすいませんだ。この時の私はKをあまりよく思っていなかった。だがKを好きと思ったこともまた事実だ。私は相手から好きと言われたら好きになってしまうチェリーくんでその時に雰囲気も後押ししKに自分の好意を伝えることを決意した。だから付き合ってくださいとかそういう意図はない。ただKに対して私の思いを伝えたかっただけである。明日黙って帰国することに対しても心残りがあり、こうして外に出る予定がなかったにも関わらず何の運命の悪戯かはわからないがこうして再び会ってしまった。フィリピンでの思い出に対して良い思い出として意味を与えるために肯定的にに最後を締めくくろうと思った。そう思っていたところに散歩好きな無感情&KY野郎が帰ってきた。30分ぐらい3人で簡単にドリンクを飲み、寄宿舎に帰ることにした。散歩好きな無感情&KY野郎にKと個人的に話したいことがあるから先にトライシクルを呼んでくれないかと頼んだところ快く了承してくれまたKと二人きりになる。この時は気まずさを感じなかった。私から二人きりになる状況を作ったからだ。30分間で言いたいことは全てまとめた。後ろを振り返り。Kに話があると言う。

自分 : “ 明日帰国します ” 

彼女 : ” そうだね ” 

自分 : “ 僕はフィリピンにアメリカの大学院進学のために英語力の基盤を固めるために来て、勉強以外の不必要なことに対して時間を使う予定はありませんでした。日本人と仲良くすることも含まれていました ” 

彼女 : ” … ” 

自分 : “ ですが結果的にあなたと会って良かったと思っています。あなたと出会い日々を過ごすうちに好意を持ちました。勉強中でもあなたのことを考えたり、授業の休み時間とかあなたに会うことが毎日の楽しみになりました。あなたと少しでも話せたその日は幸せを感じていました ” 

彼女 : ” … ” 

自分 : “ 僕はあなたのことが好きです。だから付き合おうというわけではありません。ただあなたに対して好意を伝えたかった。ただそれだけです。最後にこうしてあなたに思いを伝えられて良かったです。あなたと出会えて心から良かったとそう思います。 ” 

Kは何も言わず目を見つめてくる。何かもいうわけでもなく、キスをしてくるわけでもなく、ただ一点に見つめてくる。Kが口を開く。

彼女 : ” 遅すぎるよ ”
自分 : “ すいません ” 

散歩好きな無感情&KY野郎が呼んでる。Kが何か言おうとしているのにさすが空気読めない野郎だ。

自分 : “ 行きましょう ”
彼女 : ” … ” 

トライシクルに乗って寄宿舎に帰る。席でKが隣にいたのだが、だた沈黙だけが二人の間に介在していた。20分ぐらいして寄宿舎に到着する。そのまま一言も交わさずお互いの部屋に帰る。帰った時には深夜1時くらいになっており寄宿舎全体が暗くなっていた。部屋メンも明日の授業に備えて寝ている。明日の寄宿舎を8時に出発しなければいけなかったためベットにダイブして目をつむる。フィリピンでの思い出や留学の目的を達成したことに満足感を覚えながら今までの記憶を回想する。心残りはないと考えていたのだがまだあった。Kとの最後だ。自分の思いだけ伝えてさよならはどうかと思った。Kも伝えたいことがあるんじゃないのか。なければそれで良いがそんなことあるのか。Kを呼び出すのも気が進まなかったのでなぜかわからないが手紙を書くことにした。おそらく自分の大好きなアニメであるヴァイオレット・エヴァーガーデンの影響だろう。手紙を書いて明日来れば手紙を直接渡して来なかったら誰かに渡してもらうことにしよう。そう考えベットから飛び出し手紙を書き出す。手紙の内容はそこそこ長めに書いてしまったのであまり覚えていないがフィリピンに来た目的、Kに対しての気持ちの移り変わり、出会えたことに対する感謝など童貞ばりの文章量になってしまったがそれを手作りの封筒に閉まった。私の今までの彼女に対しての気持ちを全部文章にしたためか清々しい気分になった。気分が良くなり部屋に戻り、そのままベットにダイブし眠りに落ちた。

朝が来た。びっくりするくらいの快晴だ。手紙に長時間かけてしまい3時間くらいしか眠れなく少しばかり眠かったが心は清々しかった。荷物をぶら下げて最後のフィリピンの朝食を食べ食堂で空港行きの語学院バスを待つ。待ちながらゾロゾロと食堂に寄宿舎で友達となった人たちやメンターがありがたいことに集まってきてくれた。その中にKがいた。バスが来るまで時間があったため、Kに渡したいものがあると言い二人きりになれる場所に連れ出す。ポケットから手紙を取り出し、今までありがとうございましたと言いながら渡す。ありがとうとKが言い返し沈黙する。この時も沈黙は大変心地よかった。Kとはこれでおそらく最後だろう。最後に抱擁を交わす。

自分 : “ あなたに出会えて良かったです。ありがとう ” 抱擁しながら言う。

彼女 : ” ありがとう。私もあなたと出会えて良かった。お疲れ様。” 

しばらく抱擁し、そして離れる。Kの顔は満足そうに見え、目には涙が浮かんでいた。少しの間見つめ合う。私も涙ぐんでしまう。その時のKは本当に綺麗だった。語学院バスのエンジン音が聞こえてくる。

自分 : “ もう行きます ” 

彼女 : ” うん ” 

そう言ってバスに荷物を詰めて乗り込む。後ろではみんなバイバイしていたので自分もバイバイをする。全体に手をバイバイをしながらも目はKだけを見つめていた。バスが出発しKが見えなくなる最後の瞬間までKの目を見つめる。ついにKの姿が見えなくなり寄宿舎も見えなくなる。前を向き目を瞑りフィリピンでの思い出を回想する。空港まで小一時間ぐらいかかるのだが回想をしていたためかすぐに空港に到着する。空港の受付でパスポートを出し、出国審査場を通過し、出発までロビーで待つ。ふと携帯を見ると通知が2件来ていた。なんだろうと開いてみるとKからだった。開いてみると長文だった。出発まで時間があったため読んでみる。内容は私の第一印象、私に対して好意を抱いていたこと、プールで恋人繋ぎ等の身体的アプローチについての謝罪、私が意図的に避けていたことに気づいていたこと、Kも私と会うことが毎日の楽しみだったこと、バスケットコートで話を聞いてくれたことに対しての感謝、告白してくれて嬉しかったこと、もっと一緒に話をしたり、いろんなところに行きたかったこと等々だった。読んでいるうちに涙が溢れてきたのでトイレに直行した。トイレで泣いていたが何の涙かわからない。Kに対して好きになったり恨んだりといろんな感情を持ったが、結局はずっとKのことを思っており私の中で大切な人になっていたとその時気づいた。後悔があるとしたらKを意図的に避けて関わりを持たなかったことだろうか。もっとKと過ごしたかったし、いろんな思い出を作りたかったと思いながら、この距離感が適切だったと理性的に考える私がいて思考と感情が合わさってカオスな状態だった。時間が経つにつれて落ち着きを取り戻す。ここでこの交換留学のプログラムで英語学習を十分に基盤は作ったが一番の収穫は人間として一歩成長した気がした。一人の女性を愛し恨みながらも最後には大切な人と思えるようになった。Kに出会えたことに対して本当によかったと感謝をしながら飛行機に乗り込む。飛行機が離陸する前にKに最後の連絡をする。

自分 : “ メール読みました。あなたのことはずっと忘れません。またいつか会いましょう。今度は1人の大切な友人として。 ” 5秒後に既読がつき30秒後に返事が来る。

彼女 : ” 私もあなたをずっと忘れません。いつか必ず会おうね。 ” と返信がきたことを確認し飛行機が飛び立ち、自分の交換留学プログラムが幕を閉じた。

 

まとめ

フィリピンでは多くの経験をし、知った。交換留学の目的を達成したり、フィリピンのことだったり、スラム街、大切な人との出会いなどなど。大学生生活の中で1内容が濃く人間として成長したそんな半年だった。

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