こんにちはキャメロン・ラッセルです。ここ何年かの間モデルをやっています。実際には10年になります。この会場には何かピリピリした空気が漂っていますが、 きっと 私がこんな服を着ているからですね (笑)幸い着替えを持ってきました。 TED史上初ステージ上での衣装替えなので、これを見られる皆さんはラッキーだと思います。 私がステージに出てくるのを見て、どうなる事かと心配した方がいましたら、別に手を挙げなくてもいいですけど、後ほどツイッターで見つけますから(笑) こんなこと出来て本当にうれしいんです。皆さんの私に対する考えを、ほんの10秒のうちに変えられるなんて、そんなチャンス滅多にありませんものね。 このヒールは疲れるので別の靴を持ってきて良かったわ。セーターをかぶる時、みんな笑うんですよ。滑稽な姿をしていてもバカにしないでくださいね。 これでいいですね。なぜこんな事 お見せしたと思いますか?お見苦しいものをお見せしました。まあでも、この写真よりはマシだったと良いんですが。 イメージというものは強烈です。しかし同時にイメージとは表面的なものなんです。私はたった今数秒で自分のイメージを変えました。 この写真の当時、実は男の子と付き合ったこともなく、やりにくい撮影でカメラマンの指示に従い、背中を反らせたり、男性の髪に手をやったりしたんです。 もちろん手術やこんな撮影のため、数日前にやったニセ日焼けが無ければ、容姿を変えることなどほとんどできません。単に表面的で変えられないものだと、分かっていても 外見というものは、私生活に莫大な影響を及ぼします。 私にとって このイベントのテーマである「勇気」とは真実を話す事だと思います。私はモデルだから、このステージに立っています。顔立ちがよく、そして白人なので このステージにいるんです。業界用語ではセクシーガールといいます。今日はよく聞かれる質問に答えたいと思います。普段と違って正直にね。 まず聞かれるのはどうやってモデルになったか。いつも 「スカウトされたから」と答えますが。これでは答えになっていません。モデルになれた真の理由は、 偉大な伝承物をうけとったからです。受け継がれた伝承物は何かというと、この数世紀の間、私たちの定義する美しさは、単に健康、若さ、均整といった 生物学的に称賛するよう、仕込まれてきた要素だけでなく、長身ですらっとした体型、女性らしさや白い肌なども含むようになりました。この様に 私に都合良く 受け継がれて来た ものを使って稼いでいるわけです。 これを疑問視する人もいるでしょう。ファッションに詳しい方はこう言うかもしれません。「ナオミやタイラ、ジョン・スモールズ、リウ・ウェンなど白人以外のモデルもいるぞ」 モデルのことをよくご存知で。すばらしいですね。(笑)でも実はそうではないんです。2007年 ニューヨーク大の聡明な博士課程の大学院生が、ランウェイを歩くモデルを 一人残らず数えました。雇用された677人のモデルのうち、白人以外の人種は4%未満の27人だけだったんです。 次によく聞かれる質問は「大人になったら私もモデルになれますか?」「さあ それは私が決めることでないし」とまず言ってから尋ねてきた少女たちに訊くんです。 「なぜモデルになりたいの?他にも いろいろなれるじゃない。米国大統領とか次世代インターネットの発明者とかあるいは忍者心胸外科医詩人なんてどう? まだ誰もなってないんだから最高じゃない?」(笑) こうやって他の選択肢を挙げても「私はモデルになりたいの」と言ったら、「だったら私のボスになるといいわ」と私は答えるの私には何の権限もないけれど、 米版『ヴォーグ』の編集長やH&MのCEO あるいは次のスティーヴン・マイゼルになれるかもしれません。モデルになりたいというのは「宝くじを当てたい」と言うのと 同じことなんです。素晴らしいことですが、自分の力ではどうにもならないことであり、キャリアとして成長できるものでもないんです。 10年間積み上げてきたモデルの知識を披露します。心胸外科医と違って短く要約できちゃいます。 カメラマンがそこにいるとします。ここにライトがあって「歩いている写真が撮りたい」と言われたら左足を、前方に真っ直ぐ伸ばし、左手は後ろ右手は前にやります。 頭は45度に保ちこうやって前後を繰り返します。友だちがいると想定して振り向くんです。300回・・400回・・500回くらいね(笑)そしてこんな感じに仕上がります(笑) 真ん中の写真はちょっと不自然ですが、なんでこうなったんでしょうね。 学校を卒業して、仕事の経験もあるとしても、それ以上履歴書に書けることはありません。例えば米国大統領になりたいとします。しかし履歴書には「下着モデル10年」 採用担当者はおかしな顔をします。 さて 次に聞かれる質問は「画像修整はしているの?」ほぼ全ての写真が修整されます。でもそれだけではないんです。この写真は私の処女作です。 人生で初めてビキニを着た時でもあります。生理すら始まっていませんでした。私生活のことに触れますが、私はごく普通の少女でした。これは撮影数ヶ月前に おばあちゃんと撮った写真です。2つは同じ日に撮った写真です。友だちが一緒に来てくれました。仏版『ヴォーグ』の撮影数日前にパジャマパーティをした写真です。 サッカーチームでの写真と『V マガジン』の写真です。そして最近の写真です。 皆さんが見ているのは、本当の私ではないですよね。これらは作品であり、ヘアスタイリスト、メイクアップアーティスト、カメラマン、スタイリスト等の専門家を初め 彼らのアシスタントやプリプロ・ポスプロ等、皆で作りあげる作品であり「私」ではないんです。 さて 次によく聞かれるのは「無料で色々もらえるの?」日常では絶対に使わない、20cmのヒールなら余るほどあります。撮影前には履きますけどね 無料でもらえるものと言えば、私生活で得られるもので、普通はあまり口にされません。地元のケンブリッジで、ショッピングに行ったとき、お金を忘れてしまいました。 しかし欲しかったドレスがタダで貰えたんです。ティーンの時、友だちとドライブしていました。赤信号を突っ切ってしまい。警察に止められましたが、「お巡りさん ごめんなさい」 と言うと見逃してもらえました。 こういった無料のものは私自身に関係なく、私の外見のおかげで得られるんです。反対に単に外見のため、犠牲を払う人たちもいます。私の住むニューヨークで、昨年 14万人のティーンが所持品検査を受けさせられましたが、そのうち86%が黒人かラテン系であり、そのほとんどが若い男性でした。ニューヨークには黒人とラテン系の 若者は17万7千人しかいませんから、彼らにしてみれば「検査を受けさせられるのか?」ではなく「何回受けさせられるのか?それはいつか?」なんです。今回話す内容を検討中に、あることを発見しました。アメリカに住む13歳の少女のうち53%が自分の体を嫌っていて、17歳になるころにはその値は78%にも上がっています。 さてよく聞かれる最後の質問は「モデルってどうなの?」です。質問者の期待する答えというのは「すらっとして 髪が美しかったら、幸せで 有名になれるわ」です。 舞台裏でのインタビューとかを聞いてそう思うのかもしれません。私たちはこう答えます。「世界中を飛び回り才能があり、情熱を持つ、クリエイティブな人たちと仕事ができるのは 素晴らしいです」 確かに嘘ではありませんが、真実の半分でしかありません。誰もカメラに向かっては絶対に言わないもの。現に私も言ったことはありませんが、私たちは不安なんです。 なぜ不安なのかと言うと、毎日自分の外見を気にしなくてはいけないからです。「足が細くて 髪がもっと艶々してたらもっと 幸せになれるかしら?」と思うことがあるならば モデルたちに会ってみることです。申し分のない脚や髪そしてステキな服も着ていますが、彼女たちはおそらく世界で一番、身体的不安を抱えています。 私はこの話の原稿を書いているとき、どうしたら正確に話の釣り合いが取れるか悩みました。このステージでこんな事を言うのは、気が引けました。 「私は運が良かったからこんなに得をした」その一方、こう付け足すのも簡単な事ではないのです。「だからと言っていつも幸せなわけではないの」でも一番難しかったのは 私たちの受け継いできた性別と人種の抑圧を話す事でした。それによって、特に恩恵を受けているのが私自身だからです。しかしこのステージに上がれて幸せで誇りにも思います。 今日ここで話せて良かったと思います。10年後 20年後 30年後もっとエージェントがついたら、たぶんどうやってこの職を得たかとか、学費をどう稼いだかなんて話さなかったかもしれません。 現在 私にとって勉強はとても大切なものです。今日の私の話を聞いて、外見上の成功や失敗の裏にはイメージの持つ力の影響があるという事を、考えられるようになって頂ける事を願っています。 ありがとうございました (拍手)