皆さんこんにちは。僕はサム。17歳になったばかりです。数年前―高校に入学する前ですが、フォクスボロ高校のマーチングバンドで スネアドラムを演奏することがどうしてもやりたいと心に決めていた夢でした。でもスネアドラムと装着器具は、合わせて18キロもあるんです。僕はプロジェリア症候群という病気をわずらっています。ご参考までに、僕の体重はたった23キロなんです。 ですから物理的にも普通のサイズのスネアドラムを持つなんてできません。そこでバンドコーチからハーフタイムショーでは ピット(打楽器を置いて演奏するパート)で演奏するよう言われました。ピットの演奏は楽しいものです。 ピットには本当にかっこいいいろんな種類の打楽器があり、ボンゴ、ティンパニ、ティンバレス、カウベルなんかです。ですから楽しかったのですが、行進はできないのでとても残念でした でもバンドの仲間のハーフタイムショーでスネアドラムを演奏しながら、行進する夢をあきらめたわけではありません。 そこで僕と家族はエンジニアと組んでより軽くて僕がかつぎやすい、スネアドラムの装着器具の開発に取り組みました。 試行錯誤の結果、遂に―たった3キロの重量のスネアドラムと装着器具を作ったのです。(拍手) ここでプロジェリアについてもう少し詳しくお伝えします。現在、世界全体で350人の子供がこの病気を発症しています。 とても珍しい病気なんですね。プロジェリアにかかると皮膚が硬化し、体重が増えず、成長が止まり心臓疾患を引き起こします。 昨年、僕の母(小児科医と科学者チームが初の成功したプロジェリア治療の論文を発表したおかげで、僕はNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)からインタビューを受け、ジョン・ハミルトンからこんな質問を受けました。 「我々が君について知っておくべきことで一番大切なことは何ですか?」僕の答えは単純明快で、「僕はとっても幸せな生活を送っている」(拍手) 僕の人生には沢山の障害があり、プロジェリアによってもたらされたものが多いですが、僕のことをかわいそうだと思ってほしくありません。「できないこと」についていつも考えている訳じゃないし、僕はほとんどの障害に打ち勝つことができます。ですから今日ここで僕にとっての幸せな人生観を皆さんと共有します。この哲学には3つの面があります。 これは有名なフェリス・ビューラーの言葉ですが、僕の哲学その1はどうしてもできないことがあっても大丈夫。だってできることが山ほどあるから。周りの人達からときどき聞かれるのは「プロジェリアを抱えてさぞかし大変でしょう?」 「プロジェリアによって日常生活に どんな支障がありますか?」こんな質問への僕の答えは「僕はプロジェリアを患っていますが、普段の生活で考えていることはプロジェリアとは全然関係ないことがほとんどなんです」目の前に立ちはだかる障害を無視しているという意味ではありません。僕が「できないこと」に直面する時―長距離走や激しいローラーコースターなど残念なのはわかっています。 でもその代わり、僕が情熱を傾けていることを通して「できること」に意識を向けるようにしています。ボーイ・スカウト、音楽、漫画 大好きな地元ボストンのスポーツチームそうですから― (笑)でも時には調整しながら、違ったやり方を見つければ良いものもあり 、これらを「できる」というカテゴリーに入れたいと思っています。 先ほど皆さんにご覧いただいたドラムみたいなものですね、これからビデオをご覧いただきます。僕がスパイダーマンを演奏しています。フォクスボロ高校のマーチングバンドで2~3年前のハーフタイムの映像です。(ビデオ)♫ スパイダーマンの主題歌 ♫ (拍手)ありがとうございます。そうですね―あれは かなり良かったです。これによってマーチングバンドでスネアドラムを演奏するという夢を達成することができ、他の夢も全て達成できると信じています。この観点から皆さんもご自身の夢を叶えていただきたいと願っています。 僕の哲学その2は自分が一緒にいたいと思う人達といることです。優れた人達です。僕がとても幸運に感じるのは 素晴らしい家族に囲まれていること。僕の人生を常に支えてくれています。さらに本当に恵まれているのは 学校のとても親しい友人達です。ちょっと抜けていたりバンドおたくが多いですが、お互い一緒にいることを 心から楽しんでいて、必要とあらばお互いを助けます。僕達は外見ではなく、中身で繋がっているんです。これは僕達が 少しふざけているところ。僕達は今、高校2年生で今では新人バンドメンバーの指導もできます。1つのチームとしてです。 バンドのようなグループに属する素晴らしいところは、皆で一緒に作り上げる音楽が本物で、誠実で、プロジェリアの存在に勝ることです。 ですから音楽を奏でて気持ちいい時は、病気の心配をしなくていいんです。ドキュメンタリー番組に出演したり、テレビ番組に 何度か出たとしても人生最高だと思えるのは、日々僕の周りにいてくれる人達と一緒にいる時なんです。彼らは僕の人生に 本当にポジティブな影響を与えてくれて、僕も彼らの人生によい影響を与えたいと願っています。(拍手)ありがとう 僕が言いたいことは、皆さん家族に感謝して大切にしてください。友人を大切にして、自分のためにも仲間を愛してください。 助言を与えてくれる人たちに感謝してコミュニティを大事にしてください。なぜならそういった人達こそ、日常生活の要で 真に素晴らしいポジティブな影響を与えてくれます。 僕の哲学その3は前に進み続けること。僕が好きなウォルト・ディズニーの言葉です。 [ 過去にこだわらず 前進を続け 新しい扉を開け 新しい事に向かっていこう ]。僕は常に楽しみになる何かや、人生を豊かにする 目標として頑張れるものを持つようにしています。大きな目標でなくてもいいんです。自分が好きな漫画の次回作を楽しみにすることでも大家族で休暇に行くこと、友達と遊ぶこと、次の高校のサッカー試合を応援しに行くことでもいい。 このようなことが僕に無駄な事を考えさせず、輝かしい未来があるんだと思わせてくれ。困難を乗り越えさせてくれる、助けになると思うんです。このようなメンタリティーは前向きな精神でいることも含みます。僕は自己憐憫をして、エネルギーを無駄にしないよう努めています。 そんな気分の時は幸せやその他の感情が入り込む隙さえないようなパラドックスに陥ってしまいます。 気分が優れない時、それを無視する訳ではありません。むしろ受け入れるような感じです。受け止めることで それを認めて、乗り越えるために必要なことをやります。僕は小さかった頃、エンジニアになりたかった。 世界をよりよい場所にする発明家になりたかったのです。この夢はレゴ好きから来たのかもしれません。 レゴを組み立てた時に自由に表現できる気持ちを味わいました。僕の家族や助言してくれる方々もいつも僕に元気をくれて自信を持たせてくれました。 今の目標は少しだけ変わりました。生物学の分野に進みたいです。細胞生物学や遺伝子学、生物化学など どんな分野でも興味があります。こちらは僕の友人で尊敬するフランシス・コリンズ、アメリカ国立衛生研究所(NIH)所長で 昨年のTEDMEDで2人で話しているところです。僕が感じているのは、将来どんな職業に就こうと世界を変えることができると 信じています。世界を変えていく努力をすることで僕は幸せになるでしょう。約4年前のことです。米ケーブルテレビ放送局HBOが 僕と家族について『Life According to Sam』というドキュメンタリー番組の制作を始めました。とても素晴らしい経験でしたが 、それも4年前のことです。皆さんと同じく僕の物事に対する考えも変わりました。将来の進路に反映されるように成熟しているといいのですが、でもその間も変わらなかったものもあります。僕のメンタリティーや人生観です。これからご覧いただきたいのは、番組に登場する若い頃の僕です。僕の哲学をご覧いただけます。 (ビデオ) 病気については遺伝学上のものだと分かってイメージが変わりました。それまでは色んなことをやるのを妨げる障壁、子供達が亡くなる原因、人々を苦しめる漠然とした「モノ」として見ていましたが、今では 細胞の成長を阻止する「体内の異常なタンパク質」だと 考えるようになりました。ですから、これで肩の荷がおりました。プロジェリアを抽象的なものとして、考える必要が無くなったからです。 さて良かったでしょう?(拍手)ありがとう。ご覧いただいたとおりこれが長年の僕の人生観です。 でも昨年の1月に試練に直面するまでは、これら全ての哲学を必要とすることはありませんでした。 ひどく具合が悪くなり気管支炎で数日間の入院を余儀なくされました。これによって自分にアイデンティティを 与えてくれた、人生の様々な側面から隔離されてしまいました。でも回復するんだと分かり、また調子が良くなることを 心待ちにすることが前に進んでいく僕の背中を後押ししてくれました。 時には勇敢になることが必要ですが、いつも簡単なわけではありません。時には尻込みしたり、へこむ日もあります。でも勇敢になることはもともと簡単じゃないんだと気づきました。僕にとってこれが前に進んでいくための秘訣だと感じます。つまるところ、 僕は自己憐憫でエネルギーを無駄にしません。一緒に過ごしたい人達に囲まれて前に進み続けます。ですから僕の哲学で皆さんも障壁の大きさに関わらず、とても幸せな人生を送って欲しいと願います。 あっ ちょっと待ってください。もう1つアドバイスがあります。(笑)できるだけパーティーには参加すること。僕の高校のホームカミングデーのダンスパーティーが明日開催されます。 僕は参加します。どうもありがとうございました(拍手)